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かにのかい

日本の怪談(二)

田中 貢太郎

田中貢太郎『日本の怪談(二)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟹の怪、花の咲く比、不動像の行方、蛇怨、鮭の祟、妖怪記、鍛冶の母、鷲、尼になった老婆、幻術、忘恩、蠅供養、這って来る紐、放生津物語、地獄の使、法衣、餅を喫う、立山の亡者宿、山の怪、山姑の怪。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,664 字 · 171 页

青空文庫

と、云うと前を歩いていた女は、「ありゃ、わたしかよ」と云って揮り向いたが、それは眼も鼻もないのっぺらな顔であった。

大井の小路と云う小路には夜よる馬の首が飛ぶように走っていた。夜海岸で投網を打っていると大入道が腰の籃を覗きに来た。七つさがりに山に往って木を伐っていると鼻の高い大きな男が来た。その大きな男は天狗であったから木を伐りに往っていた者は病気になった。八番のあれと云う地曳網の網代になった処には、曇ってどんよりとした夜には陰火がとろとろと燃えた。

高知市の北になった法華堂と云う山の方から飛んで来る陰火は、新しいおろしたての草履の裏に唾を吐いて、それで「法華堂の陰火よう」と、云って招くと陰火は見えていてもいなくても必ず傍へ来て燃えた。その陰火は法華堂のあたりで大事な手紙を無くして斬られた飛脚の魂で、今にその手紙を尋ねているので、「状がここにあるぞう」と、云って呼んでも来るのであった。

神の峰であったか陽貴山の山であったか、其処には陰火が山をぐるりととり巻くことがあって、それを見た者は必ず死んだ。陰火は到る処に燃えもすればふうわりふうわりと飛びもした。