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にほんイデオロギーろん

日本イデオロギー論

戸坂 潤

――現代日本に於ける日本主義・ファシズム・自由主義・思想の批判

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 263,376 字 · 511 页

青空文庫

スコットランドの常識学派も亦、この悟性の健全さに認識の客観性の根拠を求めた。イギリスのモーラル・サイエンスがこの一貫した人間悟性の線に沿うて展開したことは有名である。フランスに於てはヴォルテールも亦理性の健全さを認識の根拠に数えている。ただし彼によっては個人的自由は却ってこの健全な人間理性によって否定されるべきものではあるのだが。

ドイツの啓蒙期哲学に於ては、この悟性と自由との関係が特別な形で正面に押し出された。その最も代表的なものはカントに於ける啓蒙的な部分であって、一方に於て悟性と理性との区別が用意されることによって、この二つのものの外面的な制限と、同時に又この二つのものの内面的な自由(自律)とが、初めて体系的に浮き出して来る。啓蒙とはカントにとっては理性の自律に他ならない。彼はだから「啓蒙とは何ぞやに答える」の論文で(この問題はモーゼス・メンデルスゾーンも亦取り上げていたそうだが)、それは「人間が自業自得の未成年から卒業することだ」という有名な定義を下している。自業自得というのは理性的な人間が自分自身に就いて責任を有つこと、即ち彼の悟性が自由であることを、想定して初めて意味のあることだ。