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にほんイデオロギーろん
日本イデオロギー論
戸坂 潤
――現代日本に於ける日本主義・ファシズム・自由主義・思想の批判
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 263,376 字 · 511 页
(四三頁)、という農村学の「根本主張」が出て来る。――都市社会は知的結合だが、農村社会は霊的結合だそうで、崇祖の情や自然崇拝や庶物崇拝が農村の大切な特色だということである。土と自然とを尊ぶところの「土の哲学」に立つ「厚生主義社会」こそ日本の現実が向って進むべき理想でなければならぬということになる(二四〇頁)。
こうやって折角日本の経済的政治的「現実」から出発したこの農村学の農本主義も、遂に例の「精神的」な日本精神主義の一変種だったに過ぎないということが判る。農業がなぜ、一つの原理となって日本農本主義を産む程に偉いかというと、外でもない、元来「日本的」な農業とか農村とかが、元来「非日本的」な商工業や都会に較べて、いみじくも「精神的」だったからであった。農業や農村に関するあとの説明はただのそのための口実と弁解とに過ぎないようだ。
橘氏の農本主義が、言葉通り農村学的であったに対して、権藤成卿氏のものになると、「制度学的」になる。氏によると日本の特異な点は、まず夫が「社稷躰統」の国だという処に存する(『自治民範』)。というのは、社は土地神主の謂で、稷は高粱を意味するので、こうした社稷の崇拝が、即ち土穀崇拝が、日本のまず第一の特質をなしているらしい。