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にほんイデオロギーろん

日本イデオロギー論

戸坂 潤

――現代日本に於ける日本主義・ファシズム・自由主義・思想の批判

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 263,376 字 · 511 页

青空文庫

現在の日本に於て最も普及している日本主義は、例えば治安維持法を厳罰主義に「改正」しようと欲するような官僚政治的日本主義であるのだが、権藤氏によると、そういう官治主義こそは日本の成俗をなす自治主義を害うことこの上もない当のものなのだ。今日の日本の行きづまりは、直接には何よりも明治維新以降の官僚主義の責任に帰すものだと、氏は考えている。でそうだとすると『自治民範』は今日の時勢に於けるファッショ風景には一寸ソリの合わない本になるわけで、氏が夙に自分の思想に対する抑圧を覚悟したと云われるのは、よく自らを知る明があったわけである。

氏の思想は併し、無論何等の危険思想や悪思想でもないのである。彼の政治的スローガンは、「社稷の典例」に返り、「民家の共存組織」を「恢興」せよ、ということだが、では社会主義なのかそれとも共産主義なのか(彼によるとマルクスは社会主義者であって共産主義者ではない)、それとも又他の何かの政治方針を採るのかということになると、氏はどの民俗も「其民俗国情に随うの外なしと云うのみである」(五一八頁)。だからこそ右翼団体の被告の一人などから、権藤は食えない男だと思ったなどと批評されるのである。