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にほんイデオロギーろん

日本イデオロギー論

戸坂 潤

――現代日本に於ける日本主義・ファシズム・自由主義・思想の批判

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 263,376 字 · 511 页

青空文庫

(「体験」)の「体系」であるという処から、当然重大問題とならねばならぬのは弁証法の問題である。そして之に対する氏の態度も、想像するに困難ではないだろう。併し氏は例の唯物弁証法(西田博士や田辺博士が如何にして之を克服しようかと骨を折っている代物)に就いてはあまり興味はないと見えて、問題になるのはヘーゲルの弁証法だけである。恐らく、ヘーゲルの弁証法もマルクス主義の夫も、過程の弁証法を脱却していない点で同断だというので、「哲学者」であるヘーゲルだけが特に選にあずかったのだろう。

ヘーゲルの弁証法の根本問題に対しては、精緻なこの教授の頭脳は非常に示唆に富んだ分析を与えている。一般に弁証法にとっては端初=始元は根本問題だが、氏はヘーゲルの始元に於て「始元の弁証法」と、之から区別される「内容的弁証法」ともいうべきものとの、関係を取り上げる(尤もこの二つの言葉は無論氏が造ったのではない)。ヘーゲルが純有(reines Sein)を直接的であり且つ抽象的であると云う時、この二つの弁証法が混同されているというのである。即ち、本当に直接的なものは無媒介な直接性を持つ筈なのに、それを更に抽象的だと考えることによって、媒介された直接性にして了っているのであって、抽象的なものは抽象作用を媒介するのでなければ抽象的とさえ呼ぶ理由が