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にほんイデオロギーろん

日本イデオロギー論

戸坂 潤

――現代日本に於ける日本主義・ファシズム・自由主義・思想の批判

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 263,376 字 · 511 页

青空文庫

たのである。この消極的インテリ論の口裏には、だから、本当を云うと、こうした限定されたインテリの能動性に就いての却って積極的な観点からの主張が、匿されていたのである。だが常識は、決して事物の裏を見ることを知らない、その意味でのユーモアを解しない俗物なのである。インテリと呼ばれながらも、一向に知能(之は一種の人類的本能にも数えられよう)の発達していない分子は、馬鹿正直にも、インテリの無条件な悲観説の信奉者となり、そのコーラス隊をまで造り上げて了ったのである。そして何より恐るべきは、こうしたインテリ悲観論が、わが国では、何かマルクス主義のテーゼの一つでもあるように和讃されたことだ。

そこで、今度、世間的に云ってマルクス主義の「流行」が衰え始めると、それと一緒にこのインテリ悲観説も亦衰え始めなければならなかったわけであり、一連の所謂〔転向〕現象(その本質をここで論ずることの出来ないのが残念だが)に応じて、本来のインテリ楽観説ともいうべきものが復興して来たのである。悲観説がマルクス主義的だという常識から云えば、この楽観説は非マルクス主義的乃至は反マルクス主義的だという風に通念されることは、常識上尤もらしい無理のないことだろう。