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にほんイデオロギーろん

日本イデオロギー論

戸坂 潤

――現代日本に於ける日本主義・ファシズム・自由主義・思想の批判

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 263,376 字 · 511 页

青空文庫

その意味で西田哲学は社会思想を殆んど全く欠いているとさえ云わねばならぬ。

西田哲学の思想的卓越さを讃美する多くのファンは、博士の文章の処々に現われるような常識的な人間的真理に随喜するに過ぎないのであって、西田哲学の根本的な要点には殆んど触れないのが普通だ。又東洋的神秘思想とおぼしいものをここに見出すからと云って野狐禅めいた思い入れをやる読者も之と同じことだ。西田哲学の本質は実はその所謂「無の論理」にあったのである。だから西田学派はまずこの無の論理を使って見ることによって、西田論理が思想の形成に有効であるかどうかを実地に判定して見るべきだろう。処で田辺元博士は之を使って見た殆んど最初の人ではないかと思う。博士は現実の階級国家の背後に国家の理念を想定すべく、この無の論理を用いている。つまり現実の有的国家を無的国家によって裏うちされたものと見做すことによって、社会乃至国家の理想的な意義が、現実との矛盾なしに、合理的に解釈出来ようというのである。

なる程現実の社会を解釈するのに、無としての社会理念という無色透明なメジウムを通してやるのだから、現実はそのまま現実として再現されるに相違はなかろう。