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にほんイデオロギーろん
日本イデオロギー論
戸坂 潤
――現代日本に於ける日本主義・ファシズム・自由主義・思想の批判
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 263,376 字 · 511 页
前者は云わば社会学的(敢えて社会科学的とは云わぬ)概念であり、後者は社会科学的概念だと云って区別することが出来るだろう。
普通映画の大衆性とか大衆文学とか云うのはこの社会学的概念の方で、之に反してプロレタリア文学の大衆性とか大衆的利害とか云う場合はこの社会科学的概念の方を指すようである。――処がこの基本的な区別をめぐって、色々のニュアンスのある大衆概念が成り立っていることを忘れてはならぬ。まず第一に大衆をモッブ(愚衆)と考える常識的な考え方が存する。尤もモッブという呼び方は、社会に於ける総大衆という一種の想像された実体を指すことから始まるわけではなく、実は、或る時或る場所で、自然的に又は一定の人為的作為に基いて自然的に成立する処の、不規則無訓練無秩序の所謂群衆という個々の現象を指すことに始まるのであって、群集がその心理と行動とに於て、軽躁であり原始人に類し付和雷同性に富んでいる等々という事実を、モッブという言葉で云い現わしたのであるが、そこから、社会に於ける多数大衆も亦、恐らく夫を集合させればかかるモッブ性を持った群集でしかあり得ないだろうという規定に立って、大衆即ち愚衆という観念を惹き出すわけなのだ。