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にほんイデオロギーろん
日本イデオロギー論
戸坂 潤
――現代日本に於ける日本主義・ファシズム・自由主義・思想の批判
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 263,376 字 · 511 页
神聖な全知全能性を欠いている)。
指導者とは無論大衆の指導者だ。と云うのは大衆はこのファシスト的最高貴族によって初めて秩序と組織とを与えられる。大衆に秩序と組織とを与えるこの指導者は、だから一見大衆のためのものであり大衆自身のものであるかのように取られ得る可能性を有っている。実際この可能性があってこそ初めて、大衆は指導者の下に組織され得たし又得るのである。だから例えば中世的大衆はこの意味に於ける組織は持っていない。大衆に地盤をもつかのように、或いは大衆の組織化であるかのように、見えることが、ファシズムを単なる強力絶対政治から区別する一つの特徴なのである。――だが、ここにいつも一つの錯覚が横たわっている。指導者の概念は、無組織な大衆の概念に対立してこそ初めて成立するのであった。この大衆が自分の内に組織を有ち得るのも、だから、却ってそれが初めから終りまで愚衆であり賤民であるからにこそ他ならぬ。つまり大衆は自分自身で組織を持つのではなく(夫が自分自身で組織をもつなら無組織な大衆としての愚衆ではないはずだが)、如何に大衆が自発的に組織的行動をやったにしても、その自発性そのものが或る注文による自発性であれば、到底自分自身のものと云うことは出来ない筈だ。