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にほんイデオロギーろん

日本イデオロギー論

戸坂 潤

――現代日本に於ける日本主義・ファシズム・自由主義・思想の批判

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 263,376 字 · 511 页

青空文庫

単に個人々々の思いつきで、或いは農本主義とか(後藤内相)或いは「邦人主義」とか(松本学)を唱えるだけで、事実一向にまとまりがない。政党政治家も亦、彼等が地主・ブルジョアの代弁者であるにも拘らず、一向思想的に纏った雄弁家ではない。現にその合言葉一つ見ても、大抵借り物なのだ(前にあげた例の他に、「明朗」とか「挙国一致」とか等々の他愛もないフラーゼ)。

ミリタリー・ファシズムになると、この大義名分的思想の原則は極めてハッキリしている。軍部少壮分子の内には北一輝其他の政治思想体系などが行なわれるが、そういう理論的体系は大義名分思想には必要でなかった。ここではただ忠君愛国の四字に凡ての思想は集約される。だが軍部のイデオロギーがここまで集約されるには随分色々の経歴を有っている。かつては農村主義(都市反対主義)や国家統制経済主義や、甚だしいのはヘラクレイトス式「闘いの哲学」まで持ち出された。だが夫はいずれも国防至上の精神からであった。今では、かつての高橋蔵相の予算閣議に於ける声明に対する陸軍の反駁文に見られるように、大事なのは何より国防であって、農村問題や統制経済というような財政産業の問題は之を基礎とした内閣の責任であって〔軍部の知〕ったことではないという処にまでこのイデオロギーは発達して来たのである。