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あねがわのかっせん

日本合戦譚

菊池 寛

菊池寛『日本合戦譚』。同一底本的分册已合并为一书。收入:姉川合戦、厳島合戦、川中島合戦、田原坂合戦、長篠合戦、賤ヶ岳合戦、碧蹄館の戦、島原の乱、山崎合戦、鳥羽伏見の戦、大阪夏之陣、真田幸村、応仁の乱、四条畷の戦、小田原陣。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 154,771 字 · 313 页

青空文庫

田原坂の血戦の幕が、切って落されたのは間も無くである。

当時東京日日の新聞社長であった福地源一郎氏が、従軍記者として、田原坂戦闘の模様を通信して居るのがある。その中に田原坂の要害を報じて、

「……坂は急上りの長坂にて、半腹の屈曲をなし、坂の両側は皆谷にて谷の内の両側は切り崖、樹木茂る。この険の突角の所を撰びて、賊は砲塁を二重にも三重にも構へ、土俵が間に合はぬとて、百姓共が囲み置く粟麦などを俵のまゝ用ひたる程なり」

大体その険要の地であることが察せられるであろうと思う。

三月四日に、第一回の田原坂攻撃が始まる。前夜、先ず、山鹿南関の間の要衝に兵を派して厳戒せしめた。これは薩軍が迂回して背後を衝くのを慮ったからである。而して後、第二旅団の全部と、第一旅団の一部を本軍として、正面から攻撃することになり、第一旅団の残部は二俣を目指すことになった。本軍の先鋒青木大尉は、率先して進み、第一塁を陥れて勇躍更に坂を上るが、薩軍の弾丸は雨の様に降りそそぎ、午後の三時になっても占領する事が出来ないので退却した。坂の麓で督戦して居た野津少将は、再度の突撃を決意して、将士と共に決死の酒を酌んで鼓舞した。