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にっき

日記

宮本 百合子

17 観劇日記(一九二九―一九三〇年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,770 字 · 36 页

青空文庫

そこに一九三〇年上演された理由がある。又実際ロシアのビュロクラティズムは大いに問題とするに足るものだ。が、これは筋が単調なところへ、詩で書いてあるから、何ていうか科白が科白として分離するような印象を与える。それにシーンがポツポツ故、役者も一貫した熱をもつことが一寸むずかしいだろう。テムポも大して早くない。いろいろの意味で大した作ではないが、劇の焦点をビュロクラティズム反対に置いたところがレゾン・デテール〔存在理由〕なんだ。

幕がしまうとヴェジミャンスキーがおでこが大きくて指が細くしなしなしたような受口の形で出て来て大いにリズミカルなる雄弁を振い、リテラトゥールヌイ・ポストー〔雑誌『文学哨所』〕が十ヵ月もこれについて沈黙を守って居たことに対して不平をのべ、大いに観衆諸君がロシアのビュロクラティズムに反抗すべくアジした。今日は『プラウダ』も『イズヴェスチア』も第一面に六十歳を迎えたリャザノフについて書いて居た。そのリャザーノフが第三列面位に来て居て、ヴェジミャンスキーが、舞台から祝辞をのべた。リャザーノフは低くシートの中へ沈んでしまった。皆がアップロジスメント〔拍手喝采〕をしてやまず。