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にっき
日記
宮本 百合子
26 一九四三年(昭和十八年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,562 字 · 16 页
四月十四日の夕方
と夕やけを大人にしめしている。
「珍しい夕やけね」
「きれいだろ?」
自分のほこるべきもののように。
段々夕方が長くなり、雨戸をしめるとき、夜をしめだすという感じ。
六時すぎても薄明の柔かい美しさ。
私にむかってあれこれとこまごま嘘を並べる心根。
○樫の木の間の乙女椿。西日、雀の声。赤い楓の芽立ち。
○五日の夜の警戒警報。子供をつれて、フロに入っている。
○リュックをつめる。本を入れる、アンデルセン 夜のうた
○子供が国府津へうつる話。
(太郎なりに責任を知って育てなくては駄目だ)よけて育つ人間は役に立たない。
○その相談、留守番のこと、自分の病気の直しかた。
四月十四日の夕方
そろそろ七時になろうとする頃。光線の工合で樫や青木やの葉の茂みが藍のこい緑に重なって見える間に、乙女椿の桃色の花が、平常よりはこれもいくらか、涼やかなかっちりと少しやきものめいたつめたさで大変美しい。
○目白のうちの空虚さ、責任だけあって実質のない。今の方の嬉しさ。子供のこと。
◎今年は誰も桜の咲いた話をするものがなかった。
――誰も云わなかったねえ
――桜なんか見て歩いてたらつきとばされちゃう。