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にっき
日記
宮本 百合子
26 一九四三年(昭和十八年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,562 字 · 16 页
三月二日
三日
三月二日 防空演習
午後じゅうかかって『史籍集覧』の見出し紙をつける。昔の本の不便さや、それをこまごまと手入れして愛読した人々の心持を思いやる。露伴などという人は本の綴じを直したし、虫干しをしたり、そういうことにたのしみを感じられるのだろう。栄花物語、古今著聞集、今昔物語、大鏡、水、増、今など出て来たのは面白い。註解なしでは分りにくいかもしれないが。
土蔵から一緒に出して来たものの中に元禄十三年の出版にかかる『和歌八重垣』というものが七巻出て来た。誰の蔵書だったのか、西村の方から来たものだろう、定家の歌論を根拠としている。末期の和歌が常套に堕してゆく道がこういう指南書にあると思って面白い。
定型類型歌から入ることを定家は初心者にすすめて居る、心に日頃面白いと思う詩なり歌なり思い浮べてつくれというのは『八重垣』らしい。
三日
きょうの主人は泰子だから髪をきれいにかいて、赤い布のはしをリボン代りにつけてやる。
太郎のところへと思ってアルスにサンドの『白象物語』を注文しておいたのが来た。期待したほどでなく、生れかわりや前世のいんねんと云っているようなところ、又子供のテムポに合わぬほど(太郎が小さすぎもするが)美文的自然描写をしているところ満点でないが太郎むきにホンヤクして読み話ししてやったら大よろこび。