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にっき
日記
宮本 百合子
26 一九四三年(昭和十八年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,562 字 · 16 页
三月十一日
Gにその話したら、長い顔をした。ふだんやっていることを温泉に行ってまでしたくない気もわかるが。
木炭の話が出て、Hとのことおふくろなれ合ってズルズルなわけなど肯けるところがあった。この頃のような時勢でああいう母子の生活のところへ、米なり炭なり少しゆーづーつけてもらえると、そのありがたさで根本のルーズさをついあいまいにしてしまうのだということ。律儀さの欠けていることはたしかだが、女ばかりの生活の弱さが、こういう形であらわれるということには暗然たるものあり。「西部戦線」に川を泳いでパンとチーズをもって女のところへゆくことがかいてあった。何の力もなく力になる人もないのだと思うとやはり哀れなり。いろいろ考える。
「源氏物語」の時代にしろ、今にしろ、この哀れさの原因(女の哀れさ)一つなり、せめて空保にでも入っておくよう何とか都合してやろう。Hが経済出で百もわかっているのだろうのに何もせず、親のやみを流してとりつくろっているのかと思うといやだ。
三月十一日
湯浅さん来。本の礼だと思って通って貰ったら、西鶴の浮世草紙の書き入れをしたのがないの、何とかないものの不足が出た。