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わせだかぐらざか

早稲田神楽坂

加能 作次郎

「東京日日新聞」1927(昭和2)年6月11日~29日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,407 字 · 46 页

青空文庫

通寺町の発展

『いよう! なるほどこりゃ大した人出だね。』

友達は思わず角の交番の所に立ちどまって、左右を見廻しながら大袈裟に叫んだ。見ると今丁度人の出潮時らしい、電車線路をはさんで明るく灯にはえた一筋路を、一方は寺町の方から、一方は神楽坂本通りの方から、上下相うつ如くに入乱れて、無数の人の流れがぞろ/\と押し寄せていた。そして時々明るい顔を鈴のようにつらねた満員電車が、チン/\と緩やかにその流れを且堰き且通し、自動車の警笛の音と共に交通巡査の手がくる/\と忙しく廻っていた。

『いつもこうなのかね』

『毎晩この通りだね』

『まるで大きな蟻の京詣りみたいだ』

なるほどその形容は適切だと思った。そして私は、この短い、しかしてあまり広からぬ一筋の街を中心に、幾条となく前後左右にわかれている横町々々から、更にその又先の横町々々から、恰も河の本流に注ぐ支流のそれのように、人々が皆おのがじしにここを目ざし、ここの美しい灯を慕うてつどい寄って来る光景が眼に見えるような気がして、非常に愉快だった。

通寺町の発展

普通神楽坂といえば、この肴町の角から牛込見附に至る坂下までの間をさすのであるが、今ではそれを神楽坂本通りとでもいうことにして、通寺町の全部をもずっと一帯にその区域に加えねばならなくなった。