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めいあんよめもんどう

明暗嫁問答

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館 、1946(昭和21)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,984 字 · 43 页

青空文庫

とうとう謝ってしまった、「なにしろそういうわけだから、とにかく、そこでそのまたひとつ香物を出して貰おうかな、肴の口を直してもう一盞馳走になろう、すっかり酔いが醒めてしまった」

なにかちょっかいを出すたびに負けてしまう、こんどもまんまと敗北したが、勘太夫はきげんがよかった。そして「直二郎めさすがに眼が高いぞ」などと思いながら、気持よく飲みなおして母屋へ帰った。勘太夫が去ったあと、お笛は暫くぼんやりと灯を見ていた、胸に秘めていた恥かしい身の上を、初めて精しく聞いて貰った、撫でられるような快い疲れに、ただ茫然と我れを忘れていたのである。……しかし更けてゆく夜のしじまを縫って、虫の音の冴えわたるのを聞きつけると、ようやく人ごこちがついたように体を起し、そのあたりを片づけにかかった。

膳部や敷物を片づけ終ると、そこに勘太夫の莨入れがあるのをみつけた、忘れていらしったのだ、そう思って拾いあげようとしたときである、庭口でことんと戸の音がし、誰かすっとはいって来る者があった。

「どなたさまでございます」お笛はそう云いながらふり返った。