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めいじかいか あんごとりもの
明治開化 安吾捕物
10 その九 覆面屋敷
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,820 字 · 54 页
そして静かに口をひらいた。
「犯人は云うまでもなく火中に自決した駒守その人。ほかに罪ある者はおらぬ。人デンカンとは世をあざむく計略。風守は癩病だよ。生れながらの業病を隠すために人デンカンという奇妙な病人をつくりあげて覆面させたのだろうよ。目のない覆面だということだから、生れながら目がつぶれていたのかも知れないな。それを承知で一度は後嗣に選んだのは、その業病のために一そういたわりをよせる駒守の心事、豪気の丈夫にふさわしい痛快なあわれみと云うべきであろう。だが、いささか情に溺れすぎたところもある。人心を洞察すれば、その然らざる理は当初に心づいて然るべきであったのさ。業病の血をもつ母の故に自害した先妻も哀れの至り。謎をとけば、哀れの至りで、寝ざめのよい事件ではない。テンカンもちのキチガイなら、座敷牢を傷めもしようが、虚弱な業病人でメクラときては、傷めようもないのさ。それを才子に見せかけるために、英信が風守になり代って詩文を書いたのも哀れなことだ。駒守は文彦を後嗣に立てる遺言状を残して、風守とともに世を去る時を待っていたのさ。彼がいかに風守をあわれんだかは、彼も同様の覆面を用いた心事によってよく察することができよう。