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めいじかいか あんごとりもの
明治開化 安吾捕物
18 その十七 狼大明神
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,208 字 · 52 页
ここに住みついた信者の住居だ。イナリのホコラはそこから更に五六町の山上にあった。
神主の住居だけが家らしい建物であるが、それとても木と木の皮でつくられたもので、壁というものがない。
彼らは神主に対面して、おどろいた。なるほど、まったく天狗の顔である。お面の天狗ほど長い鼻ではないけれども、剣客詩人シラノどころの鼻ではない。そして、これを典型的な金ツボ眼というのであろうが、二ツの円い噴火口のようなクボミが並んで、その奥に円い目玉がギラギラ光っている。顔の色はたしかに渋紙の色にちかかった。
天狗は一行を迎えて、自分は大ヤマト大根大神の子孫、大加美太々比古であると名乗った。妻はあるが、子がないそうだ。彼はもう五十すぎていた。自分の代で大ヤマト大根大神の血は絶えるであろう。系図や古文書が失われたのは、その時が来たからである。彼はそう語ったが、悲痛というか、鬼気せまるような悲しさが彼の身内にブツブツたぎっているように見えた。
「私どもの住居する東京に当イナリの神の矢で射殺された者が現れましたが、お心当りがありますでしょうか」
新十郎がこう訊くと、天狗はくぼんだ目で新十郎はじめ一同の顔を眺めまわした。