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くらいそら

暗い空

小川 未明

「早稲田文學」1908(明治41)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,106 字 · 11 页

青空文庫

私は一見して石油井だということが分った。それでなくても、彼方には空に三角形の櫓が三ツも四ツも連っている。彼方の烟突からは黒い烟が上って青田の上に影を落して遠く町の方へと靡いているのが見える。して見ると此処は廃井に相違ない。きっとこの小屋の辺も以前にはあのような櫓が立っていたのだ。この黒い太い破れた二本の烟突から盛に彼のような黒い烟が上って、やはり青田の上に影を落して町の方へと靡いたのであろう。それが今はもう石油が出なくなったので、人々は此方の小屋を見捨てて、彼処に移ってしまったのだろう。この桶も、もう箍が腐って、石油を容れる役には立たないので捨てあるものと見える。何にしろ殺風景なものだと思って見ていた。

北の方の空は青く澄でいる。遠くに連っている町の頭が犇々と重って固っている。ぎらぎらとするのは瓦家根が多いからであろう。翻々と赤い旗も見える。長い竿の先に白い旗の翻るのも見える。其等は多分宿屋の目標であるなと思った。

この町は荒海の辺りにある。石油が出ので斯様辺鄙な処にも小さな町が出来たのだ。北の空の冴え冴えしいのは見落す下には真青な海があるからのせいもある。