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くらいそら

暗い空

小川 未明

「早稲田文學」1908(明治41)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,106 字 · 11 页

青空文庫

四

けれど戸を開けてまで中へ入り込む勇気がなかった。若し人のいるのも知らずに戸を開けたならきっと、自分を賊だと思うだろう。また疑われてもその時は弁解が出来ないと考えたからだ。私は礦場の裡を彼処此処と見廻ったけれど不思議に一人の影すら見えなかった。

四

ああ、全く不思議! 私はいつしか例の長い梯子の下に来て立ていたのである。私はこの時また、二本の頭の上に突き立った黒い、太い烟突を見上た。きっと彼の烟突に触れて見たら熱いだろう。あの中には火が吹き上っている。きっと彼の烟突の鉄は焼けていて、手を焼くに相違ないなどと思った。――次に青塗の大きな桶に目を移すと何かあの桶の中に入れてあるかその中を覗いて見たくなった。

再び四辺を見廻した。けれどやはり一人の姿を認めなかった。私は急に梯子を上って覗いて見うかと思った――若し人に見付られたら何うしよう。ただ覗いて見る位のことならその時に言い訳すれば済むだろう。兎に角この梯子を上って覗いて来る迄なら十分と経たないだろう。その間きっと人に見付らずに済むであろうと思った。

そう思うと頻りに梯子を上って、青塗の桶の中が覗たくなった。