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くらいそら
暗い空
小川 未明
「早稲田文學」1908(明治41)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,106 字 · 11 页
何んだか上るたびに梯子がぐらぐらと揺れるようだ。大分上った。ふと下から人が見て居やしまいかと思って見下した時には自分は幾十尺という空中に揺ら下っている気持がして、もう眼が昏んで何も見定が付かなかった。今更私は後悔したけれど、仕方がない。上を見ると、もう十段か二十段で、桶の端に達する位迄上ったのである……やっと桶の彼方の端が見え出した。思ったより倍も倍も大きな桶だ。直径幾十尺あるかと疑われた……また一段上ると桶の縁が一分程見え出した。また桶の真中を幅の狭い鉄板が差し渡してあることだけが分った。その鉄板の端は此方にも出ているのだが、能く見ると二三寸位しか出ていないので、下から見上た時には目に入らなかったのである。厚みも見ただけでは二三寸位もあるらしい。私は若しも下から追われたなら、この鉄板の上を渡らなければならぬのだと心配した。また一段上った。やっと彼方の縁が三分ばかり見え出した。段々上るにつれて私は強烈な石油の臭を嗅いだ。また一段上ると私の息は止るようにその臭が強くなった。桶に手の届く位の処まで来て中を覗くと真青な石油の溜池である。鉄板から五六寸ばかり下の処まで青々として澄んでいる。