轻松读懂日语经典作品
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つきのまつやま
月の松山
山本 周五郎
「キング」大日本雄辯會講談社、1954(昭和29)年8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,451 字 · 41 页
という料理屋へ馬を預け、そこから歩いて花崗道円の家へゆくのである。――いつかは(それもそう遠いさきではない)わかることだろうが、「そのとき」が来るまでは人に知られたくなかった。日も夜も、彼を捉まえて放さない恐ろしさと絶望感とは、彼以外の誰にも理解されるものではない。それを知られて、憐れまれたり同情されたりすることは、苦痛を二重にするばかりである。彼はどんなことをしても、その事実を知られないようにとつとめた。
治療を受け、薬をもらって出ると、孝也は「藤十」へ戻って酒を飲んだ。半月ほどまえから患部が痛みだして、痛みを止める薬を用いるようになっていた。
「この薬が倍量になったら」と道円は云った、「お気の毒だがどうか諦めて下さい」
諦めるという意味は明瞭である。孝也は酒を飲みながら、今日もらった薬の量が、明らかに殖えていることを思った。
「来なければ押しかけてゆくさ、こんどは必ずものにしてみせる」
隣り座敷で客たちの話しているのが聞えた。三人ばかりいるらしい、もう酔っているとみえて声が高く、こちらへ筒抜けに聞えて来た。
――酔わなければならない。
孝也は汁椀の蓋でぐいぐい飲んだ。