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げつめい

月明

豊島 与志雄

「新小説」1921(大正10)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,772 字 · 34 页

青空文庫

」

膝までしかない所に坐って、手先でじゃぶじゃぶやってる俊子へ、姉は川の真中から呼びかけた。満潮にさえならなければ、何処でも背のたつ浅い川だったけれど、俊子は決して中程まではやって来なかった。

「教えてあげるは大きいや、」と彼は引取って云った、「自分でよく泳げもしないくせに。」

「何を云ってるの。じゃあ泳ぎっくらをしましょうか。」

「しよう。」

せいぜい二十間ぐらいしか泳げない姉だったが、いつまでも後からのこのこついて来た。よく見ると泳ぐふりをして歩いてるのであった。彼は少し速力をゆるめて、姉が近づいた頃合を見計って、いきなり水にもぐった。足を捉えて引きずり込んでやるつもりだった。が……その足が見当らなかった。暫くしてひょいと水から首を出してみた。姉は早くもそれと察して、俊子の方へ逃げ出していた。彼は追っかけていった。姉は漸く俊子の側まで逃げのびると、俊子の腕につかまって、息を切らしながらも笑っていた。

俊子と一緒では仕方がなかった。それでも癪だったので、水をぶっかけてやった。

日の光りの中にぱっと水抹が立って、その下から、

「お止しなさいよ……そんなこと……卑怯よ。