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げつめい
月明
豊島 与志雄
「新小説」1921(大正10)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,772 字 · 34 页
寝転んでると、自分でもおかしいほど眠くなった。姉と俊子との話を音楽のように聞きながら、いつのまにか眠ったらしい。
眼を覚すと、室の中には誰も居なかった。電灯の光りが余り明るすぎた。寝返りをしてみた――いつのまにか枕をして褞袍を着ていた。
「静ちゃん、眼がさめたの。」
わざと返辞をしなかった。
暫くすると、また次の室から前より低い声で、
「俊子さんもいらっしゃるから、トランプでもしませんか。」
それでも黙っていた。俊子が帰ろうともしないで落付いてることが、食後姉と物影でひそひそ話していたことが、頭の底で気にかかっていた。
あたりがしいんとした。
長い時間がたったようだった。……
「そんなでもないじゃないの。」
「あなたは夜中のことを知らないからよ。」
「毎晩なの。」
「いいえ、一晩置きくらい。」
「そう。不思議ねえ。」
「親戚に精神病の人は居ないかって聞かれた時は、私どうしようかと思ったわ。」
「だって、あれくらいならまだ大丈夫よ。伯母さんやなんかに相談して大袈裟になると、却って神経を苛立たせはしないかしら。」
「それもそうね。」
「も少しそっとしておいて様子を見た方が……。