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あさかのみやでんかにじしてみなみアルプスのたび
朝香宮殿下に侍して南アルプスの旅
木暮 理太郎
「中学生」1923(大正12)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,765 字 · 26 页
広河内を遡る
とのお言葉であった。この鰍沢から西山へ越す峠は、単に大峠と呼ばれていたのであるが、殿下は太田郡長の請いの儘に足馴峠と御命名になった。
かくて西山温泉にお着きになったのは四時五十分であった。
広河内を遡る
西山温泉を出発したのは二十一日の午前六時三十分であった。旭の光は早川の西岸に眉を圧して聳え立つ白峰山脈の中腹を照らしている。しかし薬研の底のような低い谷間では、河上からおろす風が湯のぬくもりのさめない肌に、ひやりと感ずる程涼しい。温泉の下の湯川の河原では、人夫達が荷拵して待っていた。殿下は予て御用意の登山靴をお穿きになり、写真機もお弁当もリュックサックに入れて、御自身お背負になる。早川の左岸に沿うて、高い岨路を一上一下しながら遡って行く。一時間も歩いて木立を抜けると、前面に畑が現れ、其向うに奈良田の人家が低く連なっている。路傍には小学校の生徒や、在郷軍人達が整列して殿下のお通りを拝していた。村の入口に奈良王を奉祀したと伝えられている小祠がある。殿下は神前に御参拝の後、傍にしつらえてあった天幕の中で暫く御休息になった。
「●西山温泉」のキャプション付きの写真