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みらいのてんさい
未来の天才
豊島 与志雄
「人間 第三卷七月號」人間社出版部、1921(大正10)年7月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,630 字 · 38 页
私は真赤になった。咄嗟に言葉が見出せなかった。
「あのね、」静子は口早に云い出した、「昨晩あんなことをなすったものだから――あなただわね――お父さんが怒って、すぐに呼んで来いと仰言ってるのよ。」
「私を?」
「ええ。あの小包のことを私は初め気がつかなかったんですもの。お客様が帰ってから女中がお父さんの前に持って行ったのよ。お父さんが不思議そうに眺めてるのを見て、私ははっとしたけれど、もうどうにも出来なかったんです。中を開けて見て、お父さんはまた喫驚なすったようでしたわ。それから私の方へ向いて、このKというのは誰だ、お前は知ってる筈だ、と恐ろしい様子でお尋ねなさるんでしょう。隠すわけにもゆかなかったから、あなたのことをうち明けてしまったの。」
「私のことを!」
「ええ、御免なさい。でもあのことは……。」と云いかけて彼女は、眼を伏せながらちらりと瞬きをした。「あのことは黙ってたの。……それからお父さんは、あなたのことを種々問い初めなすったのよ。で私は、貧乏な若い画家だって云ったの。すると、貧乏画家にしては余り贅沢な品物ですって。私口惜しかったから、でも未来の天才ですわ、と云ってやったの。