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みかいなふうけい
未開な風景
宮本 百合子
「婦人公論」1927(昭和2)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,478 字 · 16 页
みのえこそ、真先にとび出したい者であった。けれども彼女は、パッと襖の立て合せから条になって洩れて来る光線を眺めるだけで、そこを動くことは出来ない。子供はまだ眠りつかない。
中途で立って行けば子供は泣くだろう。
母親のお清は、再び暗い、むつき臭い部屋へみのえを閉じ込めるであろう。
いつまでも眠らない子供、自分に代ろうと思ってもくれない母親。みのえは、自分の体の中で赤いものや青いものが上になったり下になったり、銀座の夜店で売っている色紙細工の気味悪い遊び道具のように、のたくり廻るのを感じた。
油井は、喉仏から出すような声で話した。
自分が出て行く迄に油井が帰ってしまいはすまいかという不安で、みのえは死にそうであった。今は大切だ。一つの身動きで子供が目を醒したら最後だ。みのえは一筋に油井の声に縋りつきながら、一生懸命
「ねろ、ねろ、ねろ」
呪文を称え、ぎっしり自分も眼を瞑った。息を殺して子供の寝息をうかがうみのえの前に、切ない待ち遠しさが光った道になって横わった。
○
母親が先に立って行く。一間と離れず油井とみのえがその後に跟いた。