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むらいちばんそうけいせん

村一番早慶戦

佐々木 邦

「冨士」大日本雄辯會講談社、1936(昭和11)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,468 字 · 34 页

青空文庫

「これからは些っと気をつけてくれ給え。僕は君のお陰で親父にウンと叱られた」

「何うしたんだい?」

「君に負けたからさ」

「今までだって、僕の方が始終二三番上だったじゃないか?」

「併し今度は開きが違う。君が上って僕が下ったから、十三番違ってしまった」

「それは、君、無理だよ。僕の責任にされちゃ困る。僕は怠ける約束なんかした覚えはないんだから」

「怠ける約束じゃない。勉強をしない約束だ」

「そんな約束をした覚えもない。勉強するのは生徒の本分だ」

「それぐらいのことは僕だって分っている」

「分っているなら、そんな変なことを言わなくても宜いじゃないか?」

「君は僕の心持が分らないんだ」

「何ういう心持だい?」

「…………」

東金君は答えなかった。黙って帰って行ってしまった。成績発表直後、態僕のところへ談判に来たのだった。僕としても東金君と言い合って物別れになったのはこれが初めてだったから、何となく気が咎めた。しかし勉強をしないという約束はした覚えがない。十番上ろうが二十番上ろうが此方の自由だ。これから先、学期末毎に苦情を言われては溜まらないから、その辺の理解をつけて置く必要があると思って、僕はその夕刻東金君を訪れた。