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かきのきのあるいえ
柿の木のある家
壺井 栄
「柿の木のある家」山の木書店、1949(昭和24)年4月20日<br>「海のたましひ」大日本雄辯會講談社、1944(昭和19)年6月14日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 15,460 字 · 32 页
そして井戸の石垣に使ったのこりの石を、ひとりで、よいこら、よいこらと、柿の木の根もとにかたづけました。石は一人でころばせるほどの大きさのが十五ばかりのこっていたのです。
ところがその翌年のことです。春がきて木々が芽を出しかけた頃にはまだ気づかなかったのですが、柿の若葉がだいぶ大きくなったころ、おじいさんは柿の木の下からその枝をながめわたし、やがて柿の木にのぼってその枝にさわってみ、長い時間、じっと考えこんでいました。そして毎日毎日柿の木を見上げてはくびをひねっていましたが、ある日仕事着にきかえると、鉢まきをして、柿の根もとの石をとりのけにかかりました。
「おじいさん、どうしたの。」
洋一がたづねますと、
「おじいさんがわるいことをしたのじゃ。ついうっかりと、考えもなしにここへ石をおいたために、今年は柿が一つも実をつけとらん。柿じゃってよっぽどつらかったんだろうよ。かわいそうなことをしたわい。」
おじいさんは汗をながしながら、「こんちきしょ、こんちきしょ」と一つ一つの石を柿の根もとからとりのけました。ひたいの汗が雨のように流れ、おじいさんはひどくつかれたようすでした。