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えいぞうのし
栄蔵の死
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1981(昭和56)年12月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 38,295 字 · 77 页
火の気のない、静かな、広い畑の中にポッツリたった一軒家には、夜のあらゆる不思議さ、恐ろしさ、又同時に美しさも、こもって居る。
年を取って、もう、かすかな脈が指にふれるばかりのこの人でさえも、あまりの静けさ、あまりの動かない空気の圧迫に驚いて、互に顔を見合わせ、
「静だすえなあ。
と云うほどであった。
弱い弱い視力を凝らして、堅い字を、罫紙にならべて行くうちに眉間が劇しく痛んで、疲れのために、字のかくは離れ離れになり、字と字の間から、種々なまぼしい光線が出て、こちゃこちゃに入り混って、到底見分けて居られなくなった。
紙をまとめて、机代りの箱の上にのせ、硯に紙の被をし筆を拭くと、左の手でグイと押しやって、そのまんま燈りの真下へ、ゴロンと仰向になった。
非常に目が疲労すると、まぼしかるべきランプの光線さえ、さほどに感じない様になるのだ。
黒い眼鏡の下に、一日一日と盲いて行く眼をつぶって気抜けのした様な、何も彼にも頭にない様な顔をして居た。
なげ出した顔をお節の方から見ると、明らかに骸骨の形に見えた。
非常に頬骨が高い性の所へ大きな黒眼鏡をかけて居るのでそれが丁度「うつろ」