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えいぞうのし

栄蔵の死

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1981(昭和56)年12月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 38,295 字 · 77 页

青空文庫

一升徳利に二升入らない通りに、栄蔵の心は、これ以上の心配を盛り切れない状態にあった。

お君を迎えに田舎に行った時に会った栄蔵と今の栄蔵とは、まるで別人の様に、恭二の眼にうつった。

急にすっかりふけてしまって居る。

前にもまして陰気に、影がうすく、貧しげである。

あれから、半年ばかりの間に、どれほどの苦労をしたのかしらんと、恭二は、ぼんやりと、無邪気な、子供が鳥の飛ぶのを驚く様な驚きを持って居た。

隣の間の夫婦は、こっちに声のもれないほどの低い声で、何やら話し会って居るらしい。折々、

「フフフフフ

とか、「いやだねえ」

などと云うお金の声が押しつぶされた様に響いて来た。十二時過まで、何かと喋って居た三人は、足らぬ勝の布団を引っぱり合って寝についた。

恭二が、じきに、フー、フーといびきをかき始めると、急に、夜の更けたのが知れる様に、妙にあたりがシインとなって仕舞った。

部屋の工合が違うので、ゴロゴロ寝返りを打ちながらうかうかとさそわれ気味で、出て来は来ても、これからたのみに行って、金策をしてもらうべき人達を、今になって、あたふたとさがさなければならなかった。