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えいぞうのし

栄蔵の死

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1981(昭和56)年12月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 38,295 字 · 77 页

青空文庫

狭い村中の評判になって、

「お君はんは病気で戻らはったてなあ、

どうおしたのやろ。

病気や云うても何の病気やか知れん、

病気も、さまざまありまっさかいな。

などと、常から口の悪い、村に一人の女按摩が云うに違いない。

そして、親達には済まない思いなどをするより今いっそ、一思いに川にでも身を投げて仕舞った方が、どれだけいいかしれない。

お君の眼の前に、病院へ行く道の、名を知らない川が流れた。

あの彼側の堤の木の影の方へ行って飛び込めば、橋からも遠いし、舟のつないである所からも隔って居るから見とがめられる様な事はあるまい。

水で死んだもの特有のギーンと張り切った体が水の上にただようて居るのが見えたりした。

義母のひどい事を長々と遺書にして、下駄の上にのせ、大きな石を袂に入れて……

身も世もあらず歎く母親の心を思う時、お君は、胸がこわばる様になった。

始めて目の覚めたお金奴の顔が見てやりたい。

さっきっから渋い顔をして何事か案じて居た栄蔵は、

「私は、今夜の夜行でどうしても立って行くさかい、お前も一緒にお行き。

こんなところに居ては気づかいで重るばかりやないか。