轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

さくらのみのじゅくするとき

桜の実の熟する時

島崎 藤村

「文章世界」1913(大正2)年1~2月、1914(大正3)年5月~1918(大正7)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,569 字 · 222 页

青空文庫

捨吉が受持の二組ばかりの生徒はその学校の普通科を卒えたものばかりで、いずれも普通科卒業の記念の写真の中に見出すことが出来た。彼はよく壁に掛った額の前に立って、若草のような人達の面影に眺め入った。

一学期も終ろうとする頃までには捨吉は大分自分の新しい周囲に慣れて来た。ある日曜に、彼は田辺の家の人達を見に行かないで、麹町の方で時を送ろうとしていた。学校からさ程遠くない位置にある会堂へ行って腰掛けた。

曽て空虚のように捨吉の眼に映った天井の下、正面にアーチの形を描いた白壁、十字を彫刻んだ木製の説教台、厚い新旧約全書の金縁の光輝、それらのものがもう一度彼の眼にあった。復た彼は会堂の空気に親もうとして、教会員としての籍を高輪から麹町に移したが、しかし吉本さんの家族や雑誌社の連中を除いてはその教会での馴染も極く薄かった。彼は会堂風な高い窓に近い席の一つを択んで後の方に黙然と腰掛けた。いくつとなく眼前に置並べてある長い腰掛の並行した線は過去った高輪教会時代の記憶を、あの牧師としての浅見先生の前に立って信徒として守るべき箇条を読み聞かせられた受洗の日の記憶を、彼の胸に喚起した。