轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
さくらのみのじゅくするとき
桜の実の熟する時
島崎 藤村
「文章世界」1913(大正2)年1~2月、1914(大正3)年5月~1918(大正7)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,569 字 · 222 页
「兄は鎌倉の方で君をお待ちすると言って、今日出掛けて行きました。妹も一緒に」
と清之助は捨吉を迎え入れて言った。
茶の間の中央にある四角な炉の周囲は、連中が――そうだ、最早連中と呼んでも可いほど親しくなった若いもの同志が互いに集っては詩文を語る中心の場所のように成っていた。そこでは同人の雑誌も編輯された。その炉辺で、差向いに火を眺めて、互いに掌をあぶりながら語り合うほど、捨吉は清之助の静かな性質を知るように成った。
「清さん、お客さまに進げて下さいな」
と障子越しに来て呼ぶ清之助のお母さんの優しい声がした。お母さんは障子の陰で、いろいろと女中の差図をして行くらしかった。やがてポツポツ食べながら話しの出来るような馳走が出た。
「何と言っても、自分等の雑誌は可愛い」
清之助は捨吉を前に置いて、実にゆっくりゆっくり食べながら話した。
寂しい霙の降出す音がして来た。伝馬町あたりの町の中とも思われないほど静かな茶の間で、捨吉はしとしと庭の外へ来る霙の音を聞きながら、別離の晩らしい時を送った。十二時打ち、一時打っても、まだ話が尽きなかった。
その晩は捨吉は伝馬町に泊った。