轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

さくらのみのじゅくするとき

桜の実の熟する時

島崎 藤村

「文章世界」1913(大正2)年1~2月、1914(大正3)年5月~1918(大正7)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,569 字 · 222 页

青空文庫

起ったり坐ったりしている人の形は生きて物言うごとくにも見える。誰かしら知った人に逢えるというその無数な彫刻の相貌を見て行くと、あそこに青木が居た、岡見が居た、清之助が居た、ここに市川が居た、菅も居た、と数えることが出来た。連中はすっかりその石像の中に居た。捨吉は立ち去りがたい思をして、旅の風呂敷包の中から紙と鉛筆とを取出し、頭の骨が高く尖って口を開いて哄笑しているようなもの、広い額と隆い鼻とを見せながらこの世の中を睨んでいるようなもの、頭のかたちは円く眼は瞑り口唇は堅く噛みしめて歯を喰いしばっているようなもの、都合五つの心像を写し取った。五百もある古い羅漢の中には、女性の相貌を偲ばせるようなものもあった。磯子、涼子、それから勝子の面影をすら見つけた。こうして作った簡単な見取図は旅での手紙と一緒にして伝馬町宛に送ろうとも考えた。毎日々々動いている彼は東京の友達からの消息に接することも出来なかった。

復た捨吉は旅を続けた。ところどころ汽車にも乗って、熱田の町まで行った。熱田から便船で四日市へ渡り、亀山という所にも一晩泊り、それから深い寂しい山路を歩いて伊賀近江の国境を越した。