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ふくろうのめ
梟の眼
大倉 燁子
「キング 一三巻三号」1937(昭和12)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,354 字 · 23 页
もし是非ともこれを望むとすれば、纏ったいくらかの金をたしまえとして渡さなければなるまい。結婚してからまだ半年にしかならない二十一歳の若夫人の身では、それだけの金の工面は少し難しかった。欲しくって、欲しくって堪らないが、これは我慢しなければならないので、その代りに小指にはめるマルキイズを借りることにして、ルビーの指輪に若干の金を添えて話をつけた。
杉村は鞄の中に指輪を納いながら、
「米国観光団の大舞踏会があるそうでございますね。ご出席なさいますんでしょう?」
「ええ、招待状が来ているから、行く積りよ」
「そのために――、皆さん、大変ご苦労をなさいます。これは内々のお話でございますが、――私共の上等品は大部分当日のために出払ってしまいました」
陽子は杉村が帰った後も、三キャラットのダイヤが眼の前を離れなかった。梅田子爵夫人ともあろうものが、あれ位のダイヤ一つ持っていないとは情けない、何とかして買いたいものだと思いながら、ぼんやり庭を眺めていると、縁側に忙しそうな足音がして、実家の次兄、平松春樹が訪ねて来た。
「あら、お兄さん」
兄の顔を見ると急に甘えるような気持ちなって、何ということなしに涙ぐんだ。