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もりのくらきよる

森の暗き夜

小川 未明

「新潮」1910(明治43)年8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,725 字 · 18 页

青空文庫

七

啼いていた小鳥は、夜の、黒色の翼の下に隠れて眠ってしまった。

今、赤い爛れた目のような、ランプの下に坐っている女は、一人でなかった。背に、小さな乳飲児を負っていた。子供は、すやすやと眠っている。力なげなランプの光りが、ここまで達しなかった。

その児は痩せている。口が尖っている。呼吸をする毎に、胴腹の骨が、ぴくりぴくりと浮き出て、また引込んだ。眼は大きく、皿を篏めたように飛び出ていた。頭髪は、幾十本か、数える位しか固まって生えていなかった。口は大きくて、開いている。この世界の空気が堅くて、吸うのが困難のように見受けられた。胴より、割合に大きな頭が、女の背に投げ出されている。

七

この貧弱な体を、黒い、強い縄で縛ったようだ。細い紐は母親の体に括り付けている。呼吸をするたびに、弱々しい胴骨がびくりびくりと暗に浮き上るようだ。

女は、黙って下を向いて仕事をしている。後姿を見ると、赤茶けた頭髪が、ランプの光りを受けて、衰えた光りを反射していた。ランプの光りは、また紫色の唇にも達している。もはや昔のように厚くはない。眼も、しょんぼりとして頬の肉も削げてしまった。