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もりのくらきよる
森の暗き夜
小川 未明
「新潮」1910(明治43)年8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,725 字 · 18 页
惨酷な料理をする……。吾らは、夜の色を讃美する。」
空の色が全く暗に塗られた時、彼らは勝手に分れた。ある者は森の野獣の血を吸おうと、青葉の下を潜って、森の中に入った。ある者は、一つ一つ障子の破れ目を、くぐり込んで、この痩せた児と女の血を吸おうと入った。
赤い爛れた目の色に似ているランプは、この小さな侵入者を見張ることが出来なかった。疲れた、黄、灰色の壁は、漠然としていて、この侵入者の休み、止る所となった。蚊の腹からは血が滴りそうになって、灰色の壁に触れている。もはやこれらの壁は、威嚇する力も持たない。蚊の吸った血に汚されるに委した。
小さな侵入者は、女の身の周囲を取巻いた。女は、仕事をせなければならぬ。蚊は、女の薄い着物の上から刺した。子供の痩せた両足に黒くなるほど止った。競争して、この貧児の血を吸い尽くしてしまおうとした。
疲れた、物憂い眠りから醒めて子供が火のように泣き立てる。けれど、黒い縄は、子供の体をしっかりと結び付けていて、子供は足を動かすことすら出来なかった。飢えている蚊は、瞬間も血を吸うことを止めなかった。子供はもがこうとして動くことが出来ない。