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もりのくらきよる
森の暗き夜
小川 未明
「新潮」1910(明治43)年8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,725 字 · 18 页
ある日、女は、森に来て、かの怪しな鳥が、倦怠そうに大きな、光沢のある、柔らかな翼を、さも持てあまして、二羽が、互に縺れ合って巣を作っているのを見ていた。長い曲線的の頸は頸と絡み合っている、長い尾は、旗の如く風に翻っている。ただそこに異った、険しげな眼と、柔和の眼とが光っていた。今、下になって、さも疲れたように枝に掴まって、ぐったりとしている眼の柔和な鳥をば、雌鳥だと思った。雄鳥は、今、巣の下に仰向になって、なにやらを巣の中に押し入れている。海の藻草のような、女の頭髪のような、ひらひらとしたものは、半分切れて、下の枝にかかっていた。なぜだか、鳥は、それをそのままにして拾い上げなかった。残りの半分は、僅ばかり、もとのように風になびいていた。
空は、円く、悠然と垂れ下がっている。どこまで深さのあるものか、分らない。淡い、緑と青とが南と北とによって違っている。海鳥の胸毛のような、軽い、白い雲が、飛んでいる。巣を作っていた鳥は、けたたましく啼いた。女の腹の啼声も、けたたましくそれに応える。
女は、刺されるような痛みと、震いとを感じた。
枝の、緑色の芽を摘んで、じっとそれに見入って、女は涙ぐんだ。