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もりのくらきよる
森の暗き夜
小川 未明
「新潮」1910(明治43)年8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,725 字 · 18 页
六
六
森に、秋が来た。怪しな啼声のする、紫と赤の混毛のある鳥はどこにか去った。この鳥の雛は、親鳥と共に南方の、赤い花の咲いている、温かな国を慕って飛び去った。葉の色が黄いろくなった。頭髪のような、黒い毛の垂れ下がっている鳥の巣は、青い、澄み渡った空の下にひらひらと懸っていた。雨の降るたびに黄色な葉が、はらはらと落ちた。中には茎の長い、黒く腐ったのが、ずるりずるりと抜髪のようになって枝から落ちた。
雷のために裂かれた木は、夕陽に赤く色どられて立っている。風は悲しく叫び、雨は女の涙をいくたびか誘った。いつの間にか、白い雪が降って来た。白いけものの、夜半に啼く声が聞えた。黒い鳥が、どんよりとした空の下に飛び廻って、林から林へ、白い雪の上にも、木の枝にも、止まっているのが見えた。
やがて、冬が去った。
女は、やはり東を向いて、下を向いて仕事をしている。障子は、鑿で、上皮の薄膜を剥ぎ取って、中から夜の黒い地肌を露出したように無残に見えた。
森は、いつしかまた重い、青と緑に色どられた。夜の暗黒な翼が、次第に下へ下へと落ちて来た。いつしか黒い森の頂きと接吻する。