轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

03 第三部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,285 字 · 330 页

青空文庫

自分はすなおに反省し、念に念をいれて描いた。だが、どう苦心をし、どう描いても、誰も認めてくれようとはしない。云うまでもないことだが、生活は窮迫するばかりであった。

「妻帯していなかったのが、せめてもの仕合せでした」

しばしば食事もぬくようになり、火のない部屋で独り、雪の音を聞きながら、夜を明かしたこともある。骨にしみとおるほど寒い、筑波おろしに吹かれながら、大川端に茫然と佇んでいたり、また、山の手の、どことも知れぬ町を、ひもじさにふるえながら、歩きまわることもあった。

「だが、私にとっては、寒さやひもじさよりも、自分の絵が認められないこと、どうしたらこのまっ暗な状態からぬけ出ることができるか、ということで頭がいっぱいだったのです」

そこまで来て、一玄は耳を傾けながら、御退屈ではないでしょうか、と訊いた。

甲斐は「いや」と云った。

「そのとき私は、とつぜん盲目になってしまいました」と一玄は続けた。

銭湯で湯が眼にはいった。その湯に毒があって、ひと夜のうちに眼が腫れ塞がり、治療もしてもらったが、十日と経たぬうちに、まったく失明してしまった。それからまる三年、この二絃琴で生きてゆこう、と決心するまでのことは省略する。