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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
03 第三部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,285 字 · 330 页
も厳重にだ、しかしなにも掴めない、毒害の事から、すでにまる二年ちかくになる、去年(寛文六年)の正月には松山(茂庭周防)が病死した」
――半年ちかく病んだあとでございました。
「松山は原田のもっとも親しい友だ」
――そればかりでなく、重縁の親族でございます。原田どのの御生母が松山の出であり、原田どのの長男帯刀宗誠どのにも、一昨年の冬、松山から輿入れがございました。
「おれは知っている、原田と周防とはもっとも親しく、心の底から信じあっている友だった、それが、万治の大変を境に、ぴたりと疎遠になった、ぴたりと、枯枝を折って捨てるように、きれいに往来を絶った」
――そのあいだに、妻女離縁という事情がございます。
「知っておる」
――原田どのの、離縁された妻女は、松山どのの家から出ました。養女ですから松山と血のつながりはございませんが、噂によると不貞なことがあったそうで、両家の往来が疎くなったのは、それが一つの原因ではないかと存じます。
「では原田の伜に、茂庭から嫁にはいったのは、どういうわけだ」
――また聞きですが、原田どのの母堂が、両家の仲を元に直すため、原田どのの意見を押し切って、まとめた縁組だということですが。