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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

03 第三部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,285 字 · 330 页

青空文庫

新妻隼人は、六郎兵衛が伊達兵部から月づき多額な金を受取っていること、それは或る役目を引受けているためで、そこもとたちはそのとき利用されるのだ、ということを告げ、それを承知だろうなと云った。藤沢は野中らにその話しをし、みんないっしょに「この道場を出よう」と主張したのである。われわれは柿崎に利用されているだけだ、道場の稽古も、出稽古も、すべて六人に任せていながら、毎月の手当は極めて些少である。野中、砂山、尾田の三人は家族を持っているが、それでもかつかつ暮すぐらいの手当しか出さない。しかも六郎兵衛自身は、伊達兵部から多額な金を取り、道場の収入も殆んど独占し、素姓の知れない女を三人も抱えて、贅沢三昧に暮している。

――そのうえ、伊達兵部のために、いつかわれわれを使ってなにかするつもりだ。

どんな事をさせられるか、それは新妻隼人も云わなかったが、これだけの道場を開く資金を出し、なお、月づき多額な金を渡している、ということから考えると、その役目がいかがわしいものであることは間違いないであろう、と藤沢は云った。そして、新妻隼人は、「そこもとたちが望むなら、べつに道場を開く資金を出してもよい」