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けんりょくのひげき
権力の悲劇
宮本 百合子
「婦人公論」1949(昭和24)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,912 字 · 10 页
したがって、故人の遺族は思いがけなく主人の身の上におこった悲劇によって、妻は主婦として行手の寒さに身をふるわせ、子息たちは、アルバイト学生の境遇を、自身たちの明日の身の上にうけ入れにくく思っただろうということもありえないことではない。良人をころし、父を失わさせたのは非人間の権力人事そのものであった。国鉄の名もない被整理従業員たちのだれかれの一家の、妻や子や年よりのおどろき、怨み、歎きとその本質は一つもちがうところのない恐慌が、故人の一家をおそったであろうという想像も許されるだろう。けれども、それに対してとられた抵抗と防衛の手段は、故人の官僚としての地位の必然によって、一国鉄従業員の場合とは全く反対にあらわれた。世間を疑惑のうちにのこしたまま、労働組合や共産党への毒素のような悪宣伝をみなぎらしたまま――遺族自身がのぞむのぞまないにかかわらず、その屍の最後の一片までを民自党の人民抑圧の政策の利用にゆだねるという悲惨な形で、いまの社会の官僚制度や保険制度の非人間性からのぬけ道を見出そうとされなければならなかった。その方法、この悲劇の社会的な原因を排除するのではなしに、かえってそれを掩護し、不合理の率直な告訴人となれないで、心ならずもそのかかしとしてつかわれながら。