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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
05 第五部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,443 字 · 398 页
――むろん、講義の骨組みは毎回大体同じであった。しかし、先生がおりおり眼をつぶったあと、じっと塾生たちを見つめてもらす言葉の中には、深い人生体験と、思索の中から生まれた、新しい知恵の言葉があり、それが次郎をして同じ講義を何度きいてもあかせない魅力になっていたのであった。
小川先生の講義は八時からはじまった。正午までの四時間を適当に二回に切って話すことになっていたが、その第一回目の半ばをすぎたころ、給仕の河瀬が講堂にはいって来て、一番うしろの席で講義をきいていた次郎の耳に、何かこっそりささやいた。
次郎は、すぐ立ちあがって、河瀬のあとについて廊下に出たが、
「長距離? どこからだい。」
「東京からです。あなたに出てもらうようにいわれました。」
「田沼先生からかな。」
「そうじゃないようです。若い人の声でした。」
そう言っている間に、次郎はもう、事務室の受話機の前に立っていた。
相手はあんがいにも恭一だった。次郎がどぎまぎしながら、自分の名を告げると、恭一はかなり興奮した調子で言った。
「どうだい。そちらには、まだ何も変わったことはないのか。」
次郎は、いきなりそんなことを言われて、いよいよどぎまぎしたが、