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しょうごのさつじん

正午の殺人

坂口 安吾

「小説新潮 第七巻第一〇号」1953(昭和28)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,888 字 · 28 页

青空文庫

あんな時刻になぜラジオが鳴ってたのか、僕には見当がつきませんよ。先生のきくラジオは主としてスポーツと、たまにニュースぐらいのもので、その他の時間は当家のラジオは有って無き存在ですからね。もっとも、時に偶然や気まぐれは過去にも有ったかも知れません。あの日もたまたま気まぐれの日に当っていたのかも知れませんが、とにかくこれも当日の異常の一ツですよ」

このラジオはアケミの記憶によれば神田が唐手の型をやりだす時にスイッチをひねったもので、文作の記憶によっても、彼が到着した時から立ち去る時まで鳴りつづいていたように思われるのである。すくなくとも、誰かが一度とめたり、またひねったりしたような出来事の記憶はなかった。

木曾は云った。

「ふだんなら、僕が室内へ行ってラジオをとめるところですが、当日安川さんが見えてられるときいてたものですから、そのための何かの必要によるものと考えて、ほッたらかしておいたんです。ラジオの鳴ってることは知ってましたとも。異常な事ですからね」

ここにも異常が一つふえたが、やっぱり他殺の確実な証拠にはならない。あとに残った問題は、ピストルが誰の物かということぐらいだ。