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しょうごのさつじん

正午の殺人

坂口 安吾

「小説新潮 第七巻第一〇号」1953(昭和28)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,888 字 · 28 页

青空文庫

電話は大広間の台所よりのところに設備されており、台所の戸口の外でマキ割りをしている木曾の耳にきこえるのが普通である。

「僕は自転車を押し上げる普通の速力で登ってきました。神社の前でサイレンをきいたのから判断して、十二時五分か六分ぐらいには裏口へ到着したかも知れませんね。しかし、マキを運んできたり割ったりしているときに電話の音なぞ、きこえません。いま皆さんは電話の鳴るのを予期しているから聞えるのですが、無心にマキ割りしてる時はまた別だと思いますよ」木曾は実地検証にきた人々にこう説明したのである。

そのときアケミはハッと気がついたらしく、のぞくように木曾を見て云った。

「ねえ、木曾さん。そんなに長く、そして二回も電話のベルが鳴ってるのに、なぜ先生が電話にでなかったんでしょうね。先生はベルを長く鳴らせておくのが何よりキライな人ですもの。私たちがいるときに三度以上もベルが鳴れば、血相変えて怒鳴られるわ。さもなければキチガイのようにとびだしてきて、受話器を外してしまうわね」

すると木曾はいかにもバカバカしくてたまらぬように答えた。

「その音については、変テコだらけですよ。