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しょうごのさつじん

正午の殺人

坂口 安吾

「小説新潮 第七巻第一〇号」1953(昭和28)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,888 字 · 28 页

青空文庫

神田がピストルを所持していることはアケミも木曾も知らなかった。

「先生の寝室のどのヒキダシも、押入の奥の奥まで、先生の知らないことまで私は知ってるのですもの。このピストルはウチの物ではありません」

とアケミは断言した。しかしその断言を裏づける確証はこれまたない。

しかし、各新聞は云い合わせたように他殺の疑いをすてなかった。自殺にせよ、他殺にせよ、久子が銃声をきかないのは変だ。他殺なら、銃声をごまかすための作為があるかも知れないが、自殺の場合にそんな作為は有り得ない。したがって、銃声がきこえないのは他殺の証拠だと考えているのである。そして、その裏には、概ね久子が犯人だときめている様子であった。

「畜生め。他殺かも知れないが、安川久子が犯人だなんて」

と文作は新聞を読むたびカンカンに腹を立てたが、彼の力ではどう脳ミソをしぼっても彼女の無罪を証明する手が見つからない。

そこで旧友の巨勢博士を訪ねて、その意見をきくことにした。二人は一しょに同人雑誌をだしたことのあるその上の文学青年であった。

★

「来る頃だと思っていたよ。君の頭じゃ、どうにもならないからな」