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しのふちより
死の淵より
高見 順
老いたヒトデ「風景」1963(昭和38)年11月号<br>死の淵より「群像」1964(昭和39)年8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,084 字 · 38 页
おれの誕生を思わせる
祝福されない誕生を
喜ばれない
迎えられない
私生子の
ひっそりとした誕生
死ぬときも
ひとしくひっそりと
この世を去ろう
妻ひとりに静かにみとられて
だがしーんとしたそのとき
海が岸に身を打ちつけて
くだける波で
おれの死を悲しんでくれるだろう
おれは荒磯の生れなのだ
おれが生れた冬の朝
黒い日本海ははげしく荒れていたのだ
怒濤に雪が横なぐりに吹きつけていたのだ
おれが死ぬときもきっと
どどんどどんととどろく波音が
おれの誕生のときと同じように
おれの枕もとを訪れてくれるのだ
※(ローマ数字3、1-13-23)
自宅に帰ってからの詩である。はじめはベッドに寝たきりだったが、だんだん庭に出たり近くを散歩するようになった。気持や考えもすこしずつまた変ってきた。一方、心境の明暗の度合いのはげしくなったところもあり、自己から離れた詩の書ける時もあった。
安東次男は詩は老年の文学であると書いていた。私にとって詩は正に老年の文学である。私の詩の実際は、安東次男の言う老年の文学とは違うかもしれぬが、詩が青春の文学だけでないのは、私のためにも詩のためにも仕合わせである。